« 「最後の雨」 | トップページ | TULIP再結成!! »

2005/01/26

「山口さんちのツトムくん」

私が幼稚園児だった頃、「山口さんちのツトムくん」と
いう歌が流行っていた。このタイトルを聞いて、
「あー!あったね、こんな歌」と声をあげている方も
いるかもしれない。


これは、NHKの「みんなのうた」で歌われたのが
きっかけで、爆発的に流行したように覚えている。
幼稚園で配られた、夏休みを楽しく過ごすための
冊子にも、童謡などと並んで、先生手書きの
歌詞と楽譜が載せられていたような気もする。
TVからは毎日のようにこの歌が流れていたし、
幼稚園でも歌っている友だちがいた。

この歌は、おおよそこんな内容である。ツトムくんの
友だちの視点から書かれている詞で、TVの絵では
女の子だった。

「山口さんちのツトムくんは、この頃は毎日しょんぼり
していて、どんなに誘っても一緒に遊ばない。でも、
それは実はツトムくんのママが田舎に行っていた
からで、ママが帰ってきたらたちまち元のように
元気になって、お土産の苺を持って遊びに来て
くれた」

周りの皆が楽しそうに歌っているのを見ても、私には、
その理由がまるでわからなかった。というのは、
「ツトムくんのママが、ツトムくんを置いて田舎に
行っていた」というのが心理的にどうしても理解
できず、「ツトムくんのママは、子どもを置いて田舎に
勝手に帰っちゃうなんて、なんてひどいんだろう!!
そんな冷たいママの歌を、どうしてみんなは楽しそうに
歌っているのかなあ」と思っていたからである。

今振り返ってみると、私がこう思っていたのは、母が
本当に、子どもたちの幼い時にはそばにいてくれた
からに他ならないからだろう。私のすぐ下にきょうだいが
いたこともあり、幼稚園に行く前などは、公園に行っても、
母子3人で遊び、帰ってくるというのが当たり前だった
らしい。

無理に気の合わない「公園ママ仲間」を作るくらい
なら、親子で仲良くいるほうが気楽だ、ということも
あったのだと母は言う(ただ、幼稚園前に何もさせない
のは心配になったから、と、母は私の幼稚園入園前年、
集団生活に慣れさせようと、私をピアノ教室に入れた)。

そんな、当時の母の心情は、私は推し量るしかできない
のだが、「子どもが小さい時なんて一生続くわけではない、
だから、その間は子どもたちのそばにいて過ごそう」という
ことなのだろうか(現代と違って、当時の子どもたちの
母親は、大半が専業主婦だった。子どもと一緒にいる
しかなかった、というのが正しいのかもしれない)。

まとわりつく私たちがうっとうしいと思ったこともあるのかも
しれないが、少なくとも、子どもたちは母のそばにいて、
毎日がとても楽しかった。母も、私たちを置いて長時間
家をあける、ということを、その当時全くしなかった。

だから、私にとっては、「山口さんちのツトムくん」のママは、
子どもを置いて田舎に帰ってしまったから、あまりにも
冷淡で、どんなに優しくてきれいなママでも、絶対に
許せない存在だったのである。

当時私が「山口さんちのツトムくん」のママを許せなかった
真の理由、「自分にとって母がいない生活など考えられ
ないから」ということに気づいたのは、大人になってから
だった。今となっては、「山口さんちのツトムくんのママ」が、
田舎に帰ったのも、やむを得ない事情があったからだろうと
素直に思える。

子どもにとっては、生まれ育った家庭環境が「当たり前」と
して、全て世の中に存在していると思うのかもしれない。
ただ、成長につれて、様々なことを学ぶにつれて、それが
「世の中の当たり前とは限らない」と、気づいていくように
なる。

この「自分のいる環境が決して世界の常識ではない」と
いうことを、いかに上手に、かつ、わかりやすく伝えていく
のが自分のような職業の者の使命だと思っている。

そんな今の私にとって、「山口さんちのツトムくん」は、
幼児の時の素直な気持ちをいつも思い出させてくれる、
大事な歌となった。

|

« 「最後の雨」 | トップページ | TULIP再結成!! »

コメント

こんにちわ★
あなたのサイトをランキングに参加しませんか?
ランキングに参加すると見てくれる人が今以上に増えますのでお得です(^^)/
ではこれからも頑張って下さい☆

投稿: 人気BLOGランキング | 2005/01/30 14:12

拙ブログにコメントをありがとうございました。
AERAについては新聞広告を見て即座に買いに行き、記事を書こうと思っているところです。

ところで「山口さんちのツトム君」については多様な解釈があるようです。奇妙なことに夫婦別姓の反対論にも使われていて「夫婦別姓になれば『○○家』『○○さんち』という概念もなくなるから『山口さんちのツトム君』という歌も無くなる。または夫婦同姓ということで非難される」というのをみたことがあります(はは…)。

それはさておき、らんぼうさんのオフィシャルサイトには面白い記事があります。ご参考まで。

http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~rambow/shosai/seishun/0116.html

投稿: 夫婦別姓を待つ身 | 2005/02/07 12:49

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73691/2706643

この記事へのトラックバック一覧です: 「山口さんちのツトムくん」:

« 「最後の雨」 | トップページ | TULIP再結成!! »