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2005/03/31

談話室 滝沢

blog050331

今日で閉店する「談話室 滝沢」。

ここの新宿店に私が初めて足を
踏み入れたのは、もう10年以上
前のこと。

店内の雰囲気もさることながら、
小娘にとって、ウェイトレスさんたちの非常に
折り目正しい接客態度は驚きの一言に尽きた。
どの方もショートカットのヘアスタイルで、品良く
スーツを着こなし、お辞儀の仕方や品物の出し方
なども、非常によく訓練されている。しかも非常に
場をわきまえた応対で、客の話の雰囲気を絶対に
壊さない態度は、他のどこに行っても見られない
ものだと気づいた。

そして、ホテルの喫茶店などではなくても、こう
いった「一流の空間」があるのだ、と肌で実感した。
名刺大のお店の案内の紙に、「御見合い 御商談 
御会合 憩の場所として御利用下さい」とあるのを
見ても、なるほど、と、お見合いや商談などしたことも
ないくせに感じたものだった。

その後も何回か利用したのだが、この数年すっかり
足が遠のいていた。昨年夏、非常に久しぶりに知人と
利用したのだが、その時に「おやっ」と思ったことが
あった。

店員さんの態度が、以前とほんのわずかに違う気が
したのだ。折り目正しさは同じなのだが、なんというか、
以前の方々には凛とした雰囲気があったのに、今の
店員さんにはそれが感じられない。丁寧ではあるが、
以前の店員さんにはなかった、マニュアル的な対応の
匂いもかすかに漂っていた。

もちろん、態度が悪い、などの不快さは全くなく、非常に
レベルの高いものであることには変わらない。それでも
「この違いは何なのだろうか」と、心の中でそれ以来
ひそかに考えていた。

それが、図らずも今日の閉店を告げる複数の新聞記事
解明した。ずっとこのお店のウェイトレスさんは主に
東北地方の高卒の女性を採用していたのだそう
だが、少子化と進学率上昇で、人材を確保しにくく
なったこと、また、以前は全員正社員・全寮制で
人材を育てていた(!!)のに、最近の若者には
嫌がられ、アルバイト店員などが増え、サービスの
質を維持できなくなったということらしかった。

去年かすかに私が感じたものは本当だったのか、と
驚く。少子化の進む現在、子どもに対する親の熱意は
本当に強い。男の子の一人っ子でも、地方への進学や
就職を親が渋る時代なのだ。女の子なら尚更なのだろう。

記事では、スターバックスやドトールなどのセルフコーヒー
店に押されている、という指摘もあった。それ以外に私が
考えているのが、「IT化の波をかぶったのではないか」と
いうこと。

今は、PCを使わずに仕事ができる、という人はほんの
一握りしかいないはず。作家だってPCで”執筆”する
時代なのだ。モバイルを常に持ち歩いている人は別と
して、PCのあるところでなければ仕事ができなくなって
しまった人が大半だろう。そうすると、滝沢のような場所に
行く必然性が減ってしまう。お店の経営が悪化している
わけではないそうだが、若い客層を取り込むことも年々
難しくなっていたには違いない。

今日はさすがに行かねば、と、出かける。
中を見渡してみると、昔と変わらない風景が
広がっていたが、今日はいつもと違う、ニュースやblogを
見て、初めて来たような若い客も多くいる。また、夕刻を
過ぎると、昔からの常連さんとおぼしき、企業の重役
さんのような方も連れ立って入ってくる。

コーヒーもチーズケーキも、以前同様のおいしさ。
それなのに、閉店するというのはなんとも皮肉な話。
今までの感謝の念を表すお花の贈り物が店内の
あちこちに飾られているのが一層悲しく思える。
新宿のタイガーマスク(新聞配達をしている町の有名人)
からのお花もあるのに気づく。

タイガーマスクは残り、滝沢は消えて行く。

お店が黒字ということと、今までの客への感謝の念、と
いうことなのか、地上へ出る階段の踊り場に「30・31日の
売り上げは全額日本赤十字に寄付します」との張り紙が
あった。こういう閉店も珍しい。このお店らしい、ということの
象徴なのかもしれない。

一流とは何か、を小娘の私に示してくれた「談話室 滝沢」。
上質で濃密な時間をいつもありがとう、と改めて伝えたい。

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コメント

名店の閉店、残念ですね。これも時代の流れでしょうか。
私は親戚の集まりの流れで1回しか行ったことはありませんが(^_^;)。
『喫茶室ルノアール』はよく利用していました。<安くて長居が出来るので。

それにしても↓にはびっくり!
>全員正社員・全寮制で人材を育てていた(!!)
素材を一流にしつける時代ではなく一流を目指す人材を探さなければならなくなってきているようですね。

投稿: SHIMA | 2005/04/01 17:25

SHIMAさん、ありがとうございます。

>素材を一流にしつける時代ではなく
>一流を目指す人材を探さなければ
>ならなくなってきているようですね。

そうなのですよね。これからは、
一流を目指す人にだけ、
一流の仕事が来るのかも
しれない、と思ったりします。

投稿: つきのみどり | 2005/04/01 20:06

TBとコメント、ありがとうございました。

店員さんの変化、実は私も感じてました。全寮制ということは以前に聞いていましたが、初めて知った時はやはり驚きました。あの礼儀正しさには、「滝沢独特の安心感」があったのですが、そんな店はもうどこにもないでしょうね。

なんだか日本の良きものが一つ失われてしまったようで、残念です。

別館で打ち合わせをしていた各業界の人々(笑)これから、どこで打ち合わせをするんだろう。それが気になります。

投稿: ラブママ | 2005/04/02 09:21

ラブママさん、こちらこそお出まし
下さり、ありがとうございます。

跡地に入るお店が、いくら高級路線とは
いっても、もう同等のレベルのサービスを
提供できる空間にはなりえないのでしょうね。

「打ち合わせ難民」が多数発生しそうですが、
そのうち、「ここでなら打ち合わせが
落ち着いてできる」なんていう噂が
流れてくるのかもしれませんね。

投稿: つきのみどり | 2005/04/02 22:50

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» さよなら、「滝沢」 [See-Saw日記]
3月24日午後4時半過ぎ、新宿着。 7時半からお芝居を見る予定なので、喫茶店で仕 [続きを読む]

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