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2005/03/15

犯罪へのハードル

昨年11月に日本銀行が新札(新券)を発行したところ、
同時に、旧紙幣の偽札もあちこちで出回る事件が
起こってしまった。

それも、大人はもちろん、中・高生、果ては小学生
まで作る始末で、広がり方が手に負えなくなって
いる。

高機能なカラープリンターの出現によって、偽札が
作りやすくなった、というのが大きな理由なの
だろうが、技術面以外のことで大きな原因があると
私はにらんでいる。

それは、「犯罪へのハードル」が、極端に低くなって
いる、ということ。生徒たちの中にもそういうことを
感じる子がいて、怖い、と漏らすつぶやきを聞くことも
ある。

ひと昔前までは、「たとえ出来心でも、こういうことを
すると、こんな罪になる」ということが大人たちに
よって真剣に語られていた。

私が小学校低学年だった頃、新幹線に投石をして、
運行に支障を与えた複数の小学生が補導される、と
いうことがあった。その事件後、担任の若い女の先生は、
いつもと違って厳しい顔をして、私たちに話をしてくれた。

「みんな、いたずらでもね、新幹線を止めたら、国鉄
(当時)にお金を払わないといけないのよ。いくらだと思う?
1億円なのよ!それもね、みんなで1億円、じゃないの。

ひとりが1億円ずつ、国鉄に“すみませんでした”って払う
のよ!!もちろん子どもは払えないから、親が払うのよね。
でも、そんなお金はとんでもない金額なの。一生かかっても
払えないかもしれないわ。だから、絶対、そんないたずらを
してはいけないのよ」

こう諭されると、やんちゃ盛りの少年少女も、さすがに
心底驚く。「一線を越えてはならないいたずら」があると
気づき、「どこまでならやっていいのかな」と考えて
いたずらをするようになる。その時の教室は、水を打った
ような静けさだった。あまりに衝撃を受けた私は、
大人になってもこの話をしっかり覚えている。

ところが、今の高校生ときたら、こうである。
「偽札作るとね、重罪なのよ。だから作ったらだめなんだから」
「え、先生なんで知ってるの?偽札作ったことあるの?!」
「あるわけないでしょ!!そんなもの作ったことがあったら、
今、教師なんかできませんよ」

「えー、なんで?」
「偽札作ったら、逮捕されて、学生だったら退学になるわね。
偽札作りは重い罪だから、そういう過去は一生その人に
ついて回るのよ。少なくとも先生、という仕事には就けない
でしょうね」
「ふぅん…」

少なくともこの会話を交わした生徒は、偽札は少額の
万引き程度の犯罪、謝れば済む、と思っているようだった。
しかし、偽札を作る、ということは、言うなれば「お札を
作っている、国家に対する反逆」。罪が重いのは当たり前
なのである。

また、最近は「ちょっとお金を取ろうと家に入ったら、
家人がいて騒がれたので刺して殺してしまった」などの
犯罪もよく聞く。

これは「強盗殺人」ということになるが、このような場合、
「強盗」の上に「殺人」まで犯しているから、基本的に
犯人は死刑だと聞いたことがある。(大学時代、法学部の
教授に習った)

未成年で死刑にならなくても、被害者の遺族から、
「働き手を失ったので、損害賠償をして」と裁判を起こされ、
数千万円という単位のお金を一生かかって払うことだって
ある。若さゆえの軽い気持ちで、「お金をとってやろう」と
思ってしたことだったのかもしれないが、その代償は
あまりにも大きすぎる。

そして、犯罪とは少しそれるかもしれないが、20代を
中心に、タトゥー(刺青)がひそかな流行なのだそうだ。
実際、私の生活圏内でも、”TATOO SHOP”と看板に
書かれたお店を目にすることがある。外国のスターや、
日本の有名芸能人の影響もあるのだろう。

しかし、シールと違い、一度入れた刺青は消すのは
容易ではない。また、「生命保険への加入、スポーツ
ジムへの入会などは原則的に断られる」などの、
デメリットも数多く存在する。芸能人やスターならまだ
しも、一般人は、就職が決まっていた会社から、「当社の
風紀にはふさわしくない」と、内定を取り消されること
だってあっても不思議ではない。そして、不潔な針から
C型肝炎などの伝染病にかかることさえある。

以前、こういったリスクを教室で話したら、「え、アメリカ人
なんて気軽に入れてるじゃない」と言った生徒もいた。
「それはファッションだからね。でも、日本では、刺青を
入れる人は特定の職業の人しかいなかったから、それで
そういうことになってるんだよ」と言ったら、不思議そうな
顔をしていた。

そういったリスクを全て承知した上で刺青を入れるのなら
まだしも、本当に充分理解している人はどれほどいるの
だろう。若者には冒険も必要だが、いっときの感情で
一生後悔をすることにはなってほしくない。

こういったリスクを充分知らないで、今は簡単に犯罪や、
社会で「闇」とされてきたことに手を染める若者が多いと
いうのであれば、それは、犯罪のリスクについてあまり
語らなくなった大人たちに大きな責任がある。

家庭での教育力が落ちている今、「犯罪などに手を
染めるとどういうことになるのか」、知っている大人
たちが異口同音に声を挙げていくこと。また、かつて
そういった過ちを犯し、悔い改めて立ち直った方々の、
実体験に基づく話を聞くこと。

シンプルだけれど、こういったことは、子どもの心には
実体験として、必ず残っていく。それらに勝るものは
他にないだろう。これが、犯罪を減らす王道なのでは
ないか、と私は考えている。

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コメント

こどもが犯罪を犯罪と感じない・・・
そして今回の投石は凄まじくあってはならないことなんだけど・・・
うーん、最近は犯罪のライン自体が曖昧ですね。

例えばライブドアの自社株分割100倍&100倍。
株券の印刷が間に合わずに、株主が株券売れないのをいいことに、
自分の会社は転換社債使ってボロモウケ・・・
これなんて絶対不法行為以外なんでもないし。

ライブドア越えを目指して101匹ワンちゃん計画を実行したシーマなんて、
東証のコンピューターバグらせて、一時的にも取引ストップさせたんだから、
これも立派な損害賠償コースでしょう。

証券市場は昨日までOKだったことが、明日からは犯罪になる???な世界です。
この辺はおそらくモラルの問題なんでしょうが・・・
それを理解しない非紳士的なオトナの存在は子ども以上に責められるべきなのかもしれません。

投稿: 娑婆に出る | 2005/05/29 14:01

娑婆に出るさん、ありがとうございます。

証券業界の話は私もわからないことが
多いのですが、「非紳士的なオトナは
子ども以上に責められるべきもの」、
その通りですよね。

また良かったらこちらにいらして下さいね。

投稿: つきのみどり | 2005/05/29 19:10

近頃巷で流行るもの、ノータリン娘の刺青おしゃれ。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2005/07/post_f250.html

書きました。

B型肝炎の感染症が多いらしい。(医療関係者の間では常識)

投稿: SOBA | 2005/07/09 16:37

SOBAさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

針が不潔なので、B型肝炎などに
なるのは確かに有名のようですね。
こういったことをもっと心ある
大人が言わないと、子どもはだまされて
しまいますよね。

また良かったらおいで下さい。

投稿: つきのみどり | 2005/07/10 15:51

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