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2005/04/16

「哲学の歌」 猫・文銭

blog050416


「猫」と「まるで六文銭のように」(まる六)の
「良い子ライブ」を見に、横浜イギリス館まで
出かけた。

なぜ”良い子”か、というと、4/15だから。
こんな言葉遊びも心憎い。このライブは
突然開かれることが決まり、先月末のある日の夜半、情報が及川恒平常富喜雄両氏のサイトで流れた。

横浜イギリス館とは、山手の丘、港の見える丘公園のすぐ脇に
ある。今は庭園では名残の桜が咲いていて、そして、数々の
バラの木が咲き誇る時をひそやかに待っている。ライブの
行なわれたのは、グランドピアノの置かれたサンルーム。
ただ、夜なのでサンルームの向こうは闇が広がっている。

正式な開場時刻より少し前に到着。最前列には、どこかで
見覚えのあるような、品位のある老婦人が一人で座って
いらっしゃる。着くとすぐ「かまくら香茶庵」のお茶での
おもてなしを受ける。上質なアールグレイの香りが、体
いっぱいに染みこむ。

ライブは及川氏のひとり弾き語りでスタート。及川氏の
重みのある詞が、小さいけれどもよく響くサンルーム
いっぱいに反響する。

その後、四角佳子さん、常富さんも加わり、3人でのギター
弾き語り。「おけいさん」こと四角さんは、なんと弾き語りの
本邦初公開!とのこと。「まる六」の歌を生で聞くのは、昨年
12月のSTB139、そして3月のFOLK AID以来まだ2度目の
私にも、長年の付き合いから来る皆さんの信頼が出ている
のか、楽しみながら演奏されている、という感じが
よく伝わってきた。

3人で演奏した曲に、六文銭の「インドの街を象にのって」、
「ネコの歌」があった。これは別役実氏の手による作品。
「別役氏の作品は、難解だから、よく理解できなかった人は
拍手をしないで下さい」と及川氏がクギを刺す。

別役氏の作品の中には、教科書でかつて採用されたものも
ある。でも、哲学的な思索をしないと読み解けないものが
多いから、読解力の弱い子には「さっぱりわからない」、
「この話ヘン」という言葉で片付けられてしまう。作品の
本質にまでたどり着けるのは、日ごろかなり本を読んでいる
子だけ。

でも、本質が見えると、大人でも子どもでも、こんなに奥の深い
作品もないだろう。及川さんの詞は「難しい」と言われることが
あるのだそうだが、別役作品とどこか一緒で、深く考える人には
「はまったらやめられない」ものなのかもしれない。

今日のこの曲の演奏後は、拍手がいっぱいに広がった。

今日のようなライブでなければなかなか聞けない、「Hana」と
いう、8分にも及ぶ曲の演奏もある。この歌を聞いていて私が
すぐに気づいたのが、「この曲は、”久方の…”と根っこは
同じ」ということ。

「久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」。
紀友則(きの・とものり)作のこの短歌、『百人一首』にもある
から、日本人の多くにはおなじみだろう。「日の光のうららかな
春の日に、どうして落ち着いた心もなく、桜の花は散り急ぐの
だろう」という意味。桜の花にも人間のように心がある、と
捉えているのが、及川さんの「Hana」にも通じるものがあった。

及川さんはこの頃歌人(短歌を作る人)、俳人(俳句を作る人)と
交流があるという。「Hana」は「久方の」と根っこが同じです、と
言えば、彼らはすぐ合点してくれるだろう。

ライブの後は、再びおいしい紅茶、そして各地のおいしい
お菓子をいただきながらの楽しいひと時。すぐには立ち去り
がたく、すっかりおしゃべりに興じてしまった。

ところで、最前列にいらした老婦人は、なんと及川氏のご母堂。
30年のキャリアを持つ、ご子息のライブにいまだにお見えに
なるということは、なんと素晴らしいことなのだろう。健康で
あり、そして、息子の活動に理解を示しているからこそできる
こと。母の愛の偉大さを私も改めてかみしめた。

及川さんの詞の奥深さの入り口に立った、昨日の私。これから、
ドアを開けて奥へと入っていくことになるのだろうか。みなと
みらいの夜景を眺める帰り道、そんなことを感じた。

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コメント

 ライブ,楽しかったですね。あの世界は恒平君の世界そのもの。音楽はもちろんのこと,音響設備も全て彼が家から運んでセットするんですよ。そんな心意気というかエネルギーというか...僕はいつもやられっぱなしです。Hanaの話し,僕は12日のリハーサルの時に聞きました。これからの自分の挑戦だといってました。電子辞書を購入して少年のように自分の歩く道を語りながら弁当を食べてる姿はなかなかでしたよ。そんな気分のままコンサートは始まりました。

投稿: 常富喜雄 | 2005/04/17 11:49

常富さん、素敵なライブとコメントを
ありがとうございます。

音響設備も全て及川さんがセット
とのこと、真の「手作りコンサート」
なのですね。
お茶といい、「お宅のホールでおもてなしを
受けている」感じで、心和みました。

これからの及川さん、ますます期待して
拝見したいと思います。

投稿: つきのみどり | 2005/04/17 12:35

今回の記事で共通項が二つ。一つはイギリス館。厳密には港の見える丘公園。前職在職中、神奈川県立近代文学館で文学をテーマにした映画の上映会をやっていた。とてもお上品なお客様多く、とてもいい時間の過ごし方だなあといつも思っていた。もうひとつは別役実。演劇をやっていた頃、大好きというより勉強のためよく読んで、エチュードに利用していた。男1、2とか女1、2など役名がないところが奥深い!

投稿: イッチー | 2005/04/18 12:58

イギリス館、懐かしいです。
港の見える公園、外人墓地、山手教会…。
横浜は風景がどこか郷愁を漂わせていますよね。
山手や根岸のレストランで詩人会の集まりなどもあったようで
父がよく出かけていました。
素敵な庭園をバックに朗読会などもしていたようです。

及川恒平さん…「面影橋から」「冬の音」「名前のない君の部屋」など心に残っています。
静かにしみこむような歌達ですね。

投稿: SHIMA | 2005/04/18 14:02

イッチーさん、「文学」をテーマにした
映画ですか。興味深いですね。私が
気に入っているもののひとつに、木下恵介
監督の「野菊の如き君なりき」(『野菊の墓』)が
あります。白黒ですが、あの繊細な
世界の描き方が素晴らしいと思いました。

別役作品は知れば知るほど奥深い世界
ですよね。演劇をしている方はなおのこと
思い入れがあるのでしょうね。

投稿: つきのみどり | 2005/04/18 18:16

SHIMAさん、お父さまは詩人でいらっしゃる
のでしょうか。郷愁あるあの地での
朗読会など、とても素敵ですよね。

及川さんの詞は、「現代詩集」として
出版しても充分通じるのではないか、と
思ったりもしました。

投稿: つきのみどり | 2005/04/18 18:17

思い出しましたが、今から10年以上前、別役実が高木ブーのために書き下ろした二人芝居「トイレはこちら」を今はなき、ジャンジャンで見た。公園を根城にするブーは、通りすがりの人にトイレの場所を教えててお金をせびる…そんな話だったと思う。面白かった。

投稿: イッチー | 2005/04/18 19:26

イッチーさん、再びありがとうございます。
「トイレはこちらを」別役作品らしい、という
感じですね。渋谷のジァンジァン、構造が
ユニークだったそうですね。そういう
空間を生かした内容の作品ができる、と
いう意味でもこの場所は面白かったのかも
しれませんね。

投稿: つきのみどり | 2005/04/18 23:45

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