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2006/02/13

不離亭 身近にいる「一流」の方

blog060213

外苑前、246(青山通り)の交差点の
脇のビル、ハーゲンダッツカフェの
入っている華やかなビルを、地下へと
降りる。

イタリアンレストランの脇を抜け、
決して広いとは言えない通路を、
奥へと進む。すると、見えてくるのは、
7人も座ればいっぱいの小さなカウンター。

ここを見つけたのは、確か、去年の3月。プロ野球
選手会のイベント「LOVE BASEBALL!」
(※2005/03/25付記事参照。「スポーツ」
カテゴリー内)に来た時に、「少し時間があるので、
早めの夕食でも…」と思い、近所をうろうろしていた
時に「焼き魚定食」の文字に気づき、ふらっと入った。

超高級すし店、という経験はさすがにないけれど、
たいていのところはひとりで入ってしまう。私の
「おひとりさま」歴は結構長い。でも、この時は
「青山の一角で定食屋?!」と、内心驚きながら
席に座った。

おかみさんがカウンターの中でひとり、立ち働いて
いる。「いらっしゃい、何になさいますか」と言いつつ、
手際よく私へのお茶を注ぐ。

(えぇっと…)
鰯の味醂干し、鯵の開き、ハンバーグ。みんな
1000円でおつりがくる値段。
(えっ、ここ青山よ?!)

驚きつつ、イワシを注文。
すると、まず、目の前のケースを指して「お好きな
ものをどうぞ」と言われる。ほうれん草のおひたし、
ポテトサラダ、きんぴらごぼう…かわいい小鉢が並ぶ。

小鉢をつつきつつ、イワシが焼けるのをしばし待つ。
(ふーん、焼酎なんかもあるのね)
夜になると、飲みながらご飯をいただく方もあるんだろう。
「お昼と夜の営業ですよね。夜は何時から開けて
いらっしゃるんですか」
「うちね、ずっと通して開けてるの」

「じゃぁ、夜は9時くらいまでですか」
「そうね、日にもよるけど、だいたいね」
「日曜はお休みですよね」
「そうなのよ」
イワシを見つつ、愛想よく話をしてくれる。

「お待ちどうさまでした、どうぞ」
香ばしいにおいとともに、イワシが焼きあがる。ごはん、
白味噌のお味噌汁も一緒に出てくる。

少しずつ箸でイワシをほぐしながら、いただく。私が
よほど嬉しそうな顔をしていたのだろう、おかみさんに、
「おいしい?お魚好きなのね」
と声をかけられる。

「ええ、この味醂干しおいしいです。お魚好きなんで
嬉しいです」
「でしょう。うち、小田原から仕入れているから、
味は保証するわ」
(青山で小田原の干物、あー、嬉しい!)

親戚が海沿いに住んでいるし、母親が魚好きなので、
子どもの頃からおいしい干物はよく食べてきた。

私が満面の笑みで食事をするうちに、
「こんにちは」
常連さんとおぼしき男性がのれんをくぐる。
ハンバーグをご注文。
しばらくして焼きあがったハンバーグを食べつつ、
「これ、おいしいよね。肉だけじゃなくていろいろ
入ってるでしょう、それが”家庭の味”ぽくっていいよ」
ご満悦の様子。

こうして、短い時間でおなかも心も満たされた私、
(また来よう。マンダラなんかのライブハウスも近いから、
ライブ前に軽く食事、というのにもうってつけだし)
と思いつつ、246に面する、地上への階段をのぼった。

先月、半年ぶりにお店をひとりで訪れた。その日は
早めの夕食。カキフライを注文する。
「半年くらい前に来たんです」
「まぁ、そうでしたか…前はね、お客さんのお名刺
いただいて、その日のうちにだいたい覚えていた
から、半年前にいらした、なんて言われる方も
覚えていたんだけどね。この頃はちょっとね」
(半年前のお客を覚えていた?スゴイ!)

「それにね、最近は会社や銀行がどんどん合併
するし、外資も入るから、昔と違ってなにが
なんだかさっぱりわかんないわよね」
こんなご商売だからだろうか、仕事先、外見や
話しぶりで客の全てを一瞬で判断していかれるの
だろう。

そして、その客にあった話をてきぱきと話して
くれる。もちろん、その間も調理の手は止まる
ことがない。そして、出来あがると、おいしい
お料理でもてなして下さる。お店は小さくても、
なさっていることは立派な「一流」のお仕事ぶり。

こういう方を、私は他にも知っている。代官山の
外れ、西郷山公園の前で、軽自動車でドリップ
したてのコーヒーを売っているマスター。この方も、
いつ行ってもきちんと顔を覚えて下さって、話を
あわせて下さる。私なんて顔を出すのは、
最低でも月に1度、ううん、もっと間があくこと
だって珍しくないのに。

私の仕事は、他の職種の方とあまり接することが
ないし、接する方の職業は、ほぼ決まっている。
もともと根がミーハーということもあるが、他の職業の
方から、自分の仕事では絶対聞けないお話を聞く
のは、私にとってとても楽しく、また、ためになる
ひと時。

この頃私が、職場の外で出会う方は、圧倒的に
年上の方ばかり。つきのみどりとしての仕事、
好きで出かけるライブ…。皆さんそれぞれの
お仕事(もちろん家事・育児も含む)で立派に
ご活躍されて、今の地位を築かれてきた方ばかり。
だからこそ、「こういう方々を見習って私も頑張ろう」と
いつも思わされる。

もちろん、年下の方でも立派に活躍している方が
たくさんいる。そういう方の素晴らしさを見習わねば、
とも強く感じる。

大企業の社長さん、一流料亭のおかみさんにも、
もちろん素晴らしい方々がたくさんいる。でも、実は
自分の周囲にも「一流」の方がたくさんいらっしゃる。
そういう方の素晴らしさを吸収して、自分の生活や
仕事に還元していくことこそが、私の使命であり、
役割でもある。

「ごちそうさまでした、また来ます」
寒い中、でも、心はあたたかくなり、おかみさんに
お礼を告げた私は、246へと続く階段をのぼったのだった。

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