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2006/05/11

『一九七二』 今へつながる道しるべ

Blog060511


連休のさなか、立ち寄った
書店で見つけた本。

この本は、単行本で発行された時、
話題になったのをうっすら覚えていた。
それは2003年、春のこと。

でも、今から3年前、まだ猫の皆さんは
活動を再開しておらず、私も今ほど
この時期の出来事やカルチャーについて
深く考えていなかったように思う。
だから、その時はこの本を読まなかった。

そして、この4月、文庫化されて書棚に並んで
いるのを見つけた時、「買って!」とこの本が私を
呼んでいた。他にも読みたい本があったので、
本屋をはしごしつつ、数冊買って帰宅。

著者の坪内祐三氏は1958年生まれ。1972年、
坪内氏は14歳、東京で多感な青春時代を過ごしていた。
高度成長期の大きな文化変動がこの年に完了するのでは
ないか、という観点から、この年にスポットを当てて
書かれたとのこと。

詳しくは読んでいただきたいのだが、ページをめくると、
出るわ出るわ、当時の社会情勢や流行の数々。
日活ロマンポルノ摘発、あさま山荘事件、南沙織さんの
(1971年の)紅白初出場と沖縄返還、札幌オリンピック…。

あさま山荘事件については、首謀者の手記、回想を引用
しつつ、さまざまな視点から切り込んで論じている。私が、
あさま山荘事件、という言葉を初めて聞いたのは、確か
小学生の時。同級生が「うちのお父さんは、この事件の
時に取材に行った時、1週間家に帰ってこなかった」と
いう話をしてくれた。その子の父親は、テレビ局勤務。
ローティーンの私は、報道に従事する方の大変さ、そして、
事件の重大性に気づいた。

本文に出てくる、「沖縄返還の自民党宣伝ポスターに、
南沙織さんが出ていた」というのは私には初耳のこと。

音楽では、CCRの来日、グランド・ファンク・レイルロード、
頭脳警察、キャロル、フォークソングの大衆化、「ぴあ」の
創刊…私がラジオや本などで見聞きしてきた話が、
ここに全て載っている。私の中で、ばらばらだった
それぞれの出来事のパズルのピースが、
きれいにつなぎ合わさっていくのに気づいた。

それにしても、「結婚しようよ」、「傘がない」、「学生街の
喫茶店」、すべてこの1972年の曲だというが、見事な
までにこの3曲はフォークソングが大衆化し、そして、
歌謡曲に限りなく近づいていった事実を物語っている。

だからこそ吉田拓郎さんや井上陽水さんに憧れ続けた
方が、あんなにたくさんいらっしゃるんだ、と改めて
ライブなどでお会いする方々を思い浮かべる私。

今年の9月の「つま恋」に行かれる、この当時からの
ファンの方は、約30年分の人生の重みを改めて感じる
ことになるのだろう。

この中で、私が非常にショッキングだったのが、
「危険な十四歳」と、「子どもを殺す母親たち」の話。
子どもたち、そして、母親がストレスでおかしく
なりはじめたのはこんな頃からだったのか、と
衝撃を受けた。

一見すると普通の子が、お金ほしさに、友だちの家に
強盗に入る。泣き止まない子どもを、母親がせっかんして殺す。
34年後の現在では、悲しいことにありふれたニュースに
なってしまっているが、高度経済成長のひずみは、
こんな形で早くから現れていたのだろう。

良くも悪くも、現在へとつながる社会構造や文化の
変動が始まった、1972年。ぜひこの本で、ご自身の
思い出と重ね合わせつつ、その変化を確かめて
いただけたら、と思う。

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