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2010/08/15

岸恵子さん『風が見ていた』 自立と品格と

岸恵子さんが初めて書かれた
長編小説、『風が見ていた』。

Blog100815


発刊当時、この本は私の中であまり
大きな存在感を持っていなかった。

それが、昨年の夏。NHKの「新日曜名作座」
放送されたのを、偶然聞いた。私の前に強烈な
輝きを放ちながら、この作品は私に迫ってきた。
内容はもちろん、西田敏行さん・竹下景子さんの語りも
素晴らしかった。

番組を聞き、書店へ走り、夢中で読み終えた。

この本は、岸さんの自伝的小説。でも、小説なので、
フィクションも散りばめられており、それらが
絶妙なバランスで保たれている。

岸さんは横浜で生まれ育ったのち、女優として
活躍なさる。フランス人映画監督、イヴ・シャンピ氏と
電撃的に国際結婚、一人娘をもうけるが、のち離婚。

その後もパリと日本を往復されるだけでなく、世界を
駆け回り、NHKのBS放送などで、目の前で起こる
数々の現実を報道なさってきた。
小説にも、そのご経験の片鱗が、さまざまに
散りばめられている。

小説の主人公は衣子(きぬこ)。まだ高校生の時、
知人の大学生からフランス映画の監督に
会わないか、と恐る恐る打診を受ける。

その際、このひとことで、彼女は自らの運命の扉を開けた。
「あたし、怖いことが好きですわ」

若さゆえの恐れを知らぬ心。時に無謀とも思われる心。
でも、この心があればこそ、道なき道も切り開いて
いける。現に、岸さんは切り開いていらした。

この本では、衣子が夫を突然の事故で失っている。
その後、一人娘と共にパリで暮らし続けるのだが、
うら若き美しい未亡人には俄然注目が集まる。

彼女にはうっとうしいとしか思えない、誘いの数々。
知人だけでなく、街を歩いている時にさえもかかる。
その誘いを、毅然と払いのける衣子の品格。

ひとり異国で、子どもを育てることは、恐らく今の何倍、
何十倍も大変だった。誰かに寄りかかる方が、圧倒的に
楽だったことも容易に想像できる。でも、それを
きっぱり断り、堂々と生き抜いていらした。

その心の強さは、今の私たちも見習いたい。

そして、衣子がパリへ渡ったのは、ただの偶然では
なかった。祖父・辰吉(たつきち)が作った、パリとの
縁が身近にあった。大好きな祖父、家族との絆が、
衣子をパリへ導いた。

この頃痛感することがある。
「偶然とは、見えない必然に導かれた産物」
だということ。たまたま手に取った、知り合った、
縁があったものは、たまたまなのではない。

きちんと精いっぱい人生を生きてきた人には、
次の人生へのステップ、次のステージを実り
豊かにするもののために、偶然の顔をして、
予定して現れるものなのだと。
だから、その偶然は、絶対に大事にしなくては
ならないのだと。

昨年、引越しの際、雑誌を片付けていて、私は
息を呑んだ。「AERA」表紙で微笑む、岸恵子さん!
他の記事の保管のため、保存してあったものだった。
日付は2003/12/1。『風が見ていた』単行本出版のころ。

(まさかその時のお話が読めるなんて)
岸さんのインタビューを切り取り、文庫本に挟み込んだ。
私とこの本との出会いも、きっと、見えない必然が
呼んでくれたものなのだろう。

この本は、自立して毅然と生きる、そんな人生を目指す人々に、
勇気ある応援を届けてくれる。

そして、忘れてはならないこと。装丁は、
Delphine 麻衣子 Cianmpiさん。そう、岸さんのお嬢さん。
岸さんが大事にしていらした祖先からの絆が、今もなお、
固くつながっていることがうかがい知れる。

もちろん、横浜大空襲の惨劇の一端も、岸さんらしい、
簡潔だが品のある、真に迫る文体で書かれている。

平和がなくては品格も自立も始まらない。

今年の終戦記念日、平和への思いもこめ、この記事を
掲載したい。

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