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2013/02/07

舞台『阿修羅のごとく』 怒りに、寄り添う

2013年最初の観劇は、
『阿修羅のごとく』を選んだ。

向田邦子さんの1979年のNHKでのテレビドラマが
最初の作品。この時の演出は、和田勉さん。
その後2003年に森田芳光監督で映画化もされた。

この作品は、映画で見たのが初めてだった。
東京国際映画祭が、まだ渋谷のBunkamura
開かれていた頃。開幕の記念上映だった。
チケットをwebで買って携帯に転送、当時
使っていたSONYの携帯で会場にチェックインし、
目新しいことができて嬉しかった記憶がある。

その後NHKドラマ版もCATVで放送され、
食い入るように見た。舞台化は1999年が
最初、現在発売されている『阿修羅のごとく』
(文春文庫)では、その時に四姉妹の母を演じられた、
南田洋子さんが解説を書かれている。

昨年のうちに舞台化のお話を聞き、絶対に時間を
作って見に行こうと思っていた。念願叶い、
合間を縫ってル・テアトル銀座へ向かった。

6年くらい前の私と、それ以降の私とでは、自分で
言うのもおかしいけれど、とてつもない違いが
あると思っている。絶望の泥の河を渡り、足を
すくわれ何度も転んで、そのたび立ち上がった。
多くの人のお励ましで、遠くに見える光を目指して
歩き、激動の嵐を乗り切った。

この経験以前に見た作品は、当然、以前とは
違う輝きを持って今の私に迫ってきた。客席は
平日でも満席に近く、幅広い年代の女性を
中心に占められていた。

舞台は1979年頃の東京。基本的にドラマを
下敷きに作られている。NHKが放送した
『胡桃の部屋』のように、向田作品は、この頃は
現代に合うように改編されてドラマ化される
こともあるが、この作品は、今までの作品同様、
三女の滝子が姉妹に電話をかけるところから始まる。

改編しない理由は、見ていてすぐ気づいた。
現代に置き換えたら、四姉妹と実家、きっと、
ほとんどの家庭で離婚騒動が巻き起こり、
まったく違う話になってしまうだろう。それは
もはや『阿修羅のごとく』と呼ぶことはできない
ものになる。

そういう目で舞台を改めて見ると、1979年
当時の主婦(私の母たち)をはじめとする
女性の、社会的立場の弱さ、また、皆さんが
ありとあらゆることに忍耐されてきたことを
思い知らされた。

阿修羅とは仏教で、戦う守護神。日常の平凡そうな
日々の中に、皆、怒りや憎悪を抱えて生きており、
時折それが顔を覗かせる。忍耐の中に垣間見えるから、
一層その思いは募る。

当時の主婦と比べ、現代女性が忍耐しなくなった、
などと言うつもりはこれっぽっちもない。当時とは
また違う質の、社会参加、webやSNS、また、
もちろん家事育児などで耐えることは山のようにあるだろう。

舞台を見ながら、修羅場を潜り抜けてきた者のひとりとして、
胸が痛くなったり、共感することが山のようにあった。
そういう感情は、初めてこの作品に出会った頃には
生まれようもないものだった。

そして、現代に生き、修羅場を知っている者として、
少しでも多くの人の怒りに寄り添いたい…
静めることなどできなくても、寄り添って話を
静かに聞いて、次への光を見つける
お手伝いがしたい

こういう思いが、胸の底からふつふつと湧き上がってきた。
私より壮絶な経験の方も多くいらっしゃると、もちろん、
分かっている。でも、少しでもお役に立てたら、という思いが
強くなった。舞台を見るまでは、こんな気持ちが起こるなど、
思いもかけないことだった。

舞台は、週末の名古屋公演を残すのみ。母親役の加賀まりこさん、
また、四姉妹を演じられる、浅野温子さん、荻野目慶子さん、
高岡早紀さん、そして奥菜恵さんと、それぞれのご熱演に
釘付けになる場面があり、大変見ごたえのある内容だった。

新しい私の思いに気づかせてくれた、今年の初めの
素晴らしい舞台に、心からお礼申し上げたい。

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