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2015/11/15

稲垣潤一さん 『かだっぱり』 時代は彼を待っていた!

稲垣潤一さんのご著書『かだっぱり』が、
9月末に発売された。

発売直後に買い求め、夢中で読み終えた。
「かだっぱり」とは、仙台地方の方言で「意地っ張り」
とのこと。

前作『ハコバン’70s』(今回『闇を叩く』と改題され、
小学館文庫より発売)の続編…とはいえ、まったくの
続編というわけではない。前作はデビュー前、
仙台のキャバレーなどでバンド演奏をしていらした時代の
話だったが、今回は、

・1972年頃、初めて上京した1年間の生活
・1982年頃、デビュー直前からデビュー間もない頃の生活

この2つの時間軸が柱になっている。

初めて上京なさった頃の稲垣さんは(長年のファンの間では
おなじみだが)極貧生活街道、まっしぐら。仙台からバンドごと
上京、一旗あげるはずだったのに、思うような方向へは
道が開けない。食事にも事欠き、マネージャーにお金を
持ち逃げされ…と、読み、書いていて胸が痛くなるような
話が満載。

バンドの前途が見えないだけでなく、稲垣さんも痩せ衰え、
健康状態も悪化の一途を辿る。およそ1年後、バンドは解散、
稲垣さんは帰郷…と、絵に描いたように、東京での最初の
生活は幕切れを迎えた。

でも稲垣さんが、音楽なしの生活が続けられるはずもない。
帰郷後、仙台でハコバン生活に入られた。ハコバン生活は
約10年続いたが、東京からスカウトの方がいらして、
デビューへの道が開ける。そして、3曲目の「ドラマティック・
レイン」がヒット。その後のご活躍は、現在に至るまで続く。

ただ、今回、東京での大変な生活の話と、同時にデビュー
直後の様子を読み比べていると、改めて「下積みとも言える、
この時期の日々の努力と、洋楽メインのハコバン生活が、
独特の声と音楽センスに結実したからこそ、デビューに
つながった」と感じることができる。

1981年から82年当時の日本の音楽シーン、洋楽では
このような曲がヒットしていた。(参考・ラジオ日本
クリス松村の「いい音楽あります。」2015年11月8日放送)

・ニューヨーク・シティー・セレナーデ (Christopher Cross)
・素直になれなくて (Chicago)
・Ebony and Ivory (Paul McCartney & Stevie Wonder)
・愛と青春の旅立ち (Joe Cocker & Jennifer Warnes)
・君の瞳に恋してる (Boys Town Gang)

こういった曲は、大人の洗練された雰囲気漂うものばかり。
若者が勢いで歌いこなせる歌ではない。これらを見て、
『かだっぱり』を読むと、
(当時の音楽シーンには、稲垣さんの声や音楽センスが
受け入れられる下地があった)
ことが、はっきりとわかる。

アイドルでも歌謡曲でもない立ち位置、まだ、J-POPという
言葉もない時代。稲垣さんとスタッフの皆さんは、「大人の、
洗練された音楽を歌う日本人」を売り出していったのだ、と。
また、この頃は「ニュー・ミュージック」という言葉も定着して
いた。その領域で、聞いたことのない声で、新しい曲を
歌われた稲垣さん。きっと当時の音楽シーンに大きな
衝撃を与えたのだろう。

当時の日本の音楽シーンを振り返れば、あの透明感ある声で、
ドラムを演奏しながら、洋楽のセンスもある…という歌手は、
どなたもいなかった。単に声が独特、とか、ドラムを叩いて
歌う、というだけではなく、洋楽の良さも体現できた、というのが
デビュー後、急速に支持の広まった一つの要因だと、素直に
納得できた。

デビューには、タイミング、人やものごととのご縁、スタッフに
恵まれる、ななど、さまざまなものが絡み合ってことが運ぶ。
デビューから間もなくヒットに恵まれるというのは、まさに、
「時代が稲垣さんを待っていた」ことに、他ならない。

本は注も多く、当時の稲垣さんを知る手がかりが満載で、
紹介される曲を探して聞くのも、また楽しい。稲垣さんの
音楽の土台がわかり、本を読む面白みが増す。

なお、『ハコバン’70s』について(2013/12/21記事)、
当時歌われていた曲で構成した「ハコバンライブ」について
2015/02/15記事)も、併せてご覧いただけたら嬉しい。


【追記】
ニッポン放送「My Playlist~Kizashi~」(2015.10.25放送)で、
稲垣さんご自身の選曲で番組が放送されました。
選曲リストは次の通りです。(敬称略)ハコバン時代の
選曲がうかがえます。My Favorite Thingsはミュージカル
「サウンド・オブ・ミュージック」の曲、1959年発表です。

1.10番街の殺人(Slaughter On Tenth Avenue) (The Ventures)1964年
2.My Favorite Things(Rod Stewart) 2005年
3.Sunny(Bobby Hebb) 1966年
4.Sunshine of Your Life(Cream) 1967年
5.Sing A Simple Song(Sly&The Family Stone) 1969年
6.涙のロンリー・ボーイ(稲垣潤一 Duet with 土屋アンナ) 2015年
7.My Cherry Amour(Stevie Wonder) 1969年
8.Just The Way You Are(Billy Joel) 1977年
9.およげ!たいやきくん(稲垣潤一 Duet with 竹内美宥) 2015年

「およげ!…」は1975年のメガヒット曲。当時は「ビューティフル・
サンデー」も大ヒット中で、どこでもこの2曲にリクエストがあり、
仕方なく歌われていた、というお話が心に残りました。

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